『できる人は超短眠』は本当なのか? 公的データで検証する

『できる人は超短眠』は本当なのか? 公的データで検証する NIPPONデータ検証

世間には、「できる人ほど寝ていない」「成功者は短眠」「7時間睡眠は長すぎる」といった言説があります。

たしかに、睡眠を1時間削れば、そのぶん仕事も勉強もできます。1日は24時間しかない。これは電卓をたたけば出る、たいへん分かりやすい理屈です。

ただし、睡眠を減らした人が本当に仕事で成功しやすいのかは別問題。そこで今回は、総務省の公的統計を使い、年収や従業上の地位と睡眠時間の関係を見ました。

先に結論を言うと、公的データは「成功者一般が超短眠」というイメージを支持していません。

結論:高所得層は少し短く眠る。でも、超短眠ではない

ベッドで白いパジャマを着てうつぶせで寝ている女性。脇には目覚まし時計が設置されている。

今回使ったのは、総務省「令和3年社会生活基本調査」の表14-19-2です。有業者について、年収区分や従業上の地位ごとに、睡眠や仕事などに1日平均何分使っているかを集計しています。

高所得層でも、週全体の平均睡眠は7時間25分

年収帯別・週全体の平均睡眠時間

横軸は3時間00分から8時間00分。1500万円以上でも平均は7時間25分です。

全有業者は7時間39分、600から699万円は7時間30分、1000から1499万円は7時間27分、1500万円以上は7時間25分の週全体の平均睡眠時間です。 3時間4時間5時間6時間7時間8時間 全有業者7時間39分 600〜699万円7時間30分 1000〜1499万円7時間27分 1500万円以上7時間25分

まず、年収帯と睡眠時間を見てみましょう。

  • 全有業者:1週間平均7時間39分、平日7時間25分、勤務日の平日7時間15分。
  • 600~699万円:1週間平均7時間30分、平日7時間12分、勤務日の平日7時間06分。
  • 1000~1499万円:1週間平均7時間27分、平日7時間10分、勤務日の平日7時間05分。
  • 1500万円以上:1週間平均7時間25分、平日7時間07分、勤務日の平日7時間07分。

所得帯が上がるほど、睡眠時間は短くなる傾向があります。16の年収区分を順位で並べて計算すると、所得順位と睡眠時間のSpearman順位相関は、週全体で-0.890、平日で-0.964でした。

ここだけ見ると、「やっぱり高収入の人は短眠なのでは」と思うかもしれません。しかし、最高所得層でも週全体の平均は7時間25分です。全有業者との差は14分。短くはありますが、「1日3時間以下」といった超短眠とは、かなり距離があります。

ここで見えているのは、「超短眠」ではなく、全有業者より平均14分短いという差です。

「できる人」は睡眠を削ったというより、仕事時間が長い

高所得層では、睡眠だけでなく仕事の時間も増えています。

1500万円以上の層は、全有業者に比べて仕事時間が週全体で63分長く、平日では100分長い。仕事のある平日でも59分長くなっています。

一方、睡眠の差は、週全体で14分、平日で18分、仕事のある平日で8分です。

全有業者と1500万円以上の時間差

1500万円以上の層が全有業者より短い/長い時間を分で表示。

1500万円以上の層は全有業者より、週全体で睡眠が14分短く仕事が63分長い。平日で睡眠が18分短く仕事が100分長い。仕事のある平日で睡眠が8分短く仕事が59分長い。 睡眠仕事 週全体−14分+63分 平日−18分+100分 仕事のある平日−8分+59分

つまり、「短く眠るから成功した」というより、「仕事に使う時間が長く、その結果として睡眠が少し短い」という説明とも整合します。もちろん、これだけで長時間労働が原因だとは言えません。統計は、原因を自動で教えてくれる便利な占い師ではないからです。

ただ、少なくとも「睡眠を削れば成功に近づく」と結論づける材料にはなりません。

役員の場合はどうか?

次に、会社などの役員と雇用されている人を比べます。成功者の代理指標として役員を使いますが、役員であることと仕事ができることは同じではありません。ここは最初に線を引いておきます。

  • 雇用されている人:1週間平均7時間38分、平日7時間23分、勤務日の平日7時間12分。
  • 会社などの役員:1週間平均7時間40分、平日7時間29分、勤務日の平日7時間26分。
  • 雇人のある業主:1週間平均7時間43分、平日7時間35分、勤務日の平日7時間30分。
  • 雇人のない業主:1週間平均7時間51分、平日7時間47分、勤務日の平日7時間41分。
従業上の地位別・週全体の平均睡眠時間

横軸は3時間00分から8時間00分。会社などの役員は雇用者より2分長い結果です。

雇用されている人は7時間38分、会社などの役員は7時間40分、雇人のある業主は7時間43分、雇人のない業主は7時間51分の週全体の平均睡眠時間です。 3時間4時間5時間6時間7時間8時間 雇用者7時間38分 会社などの役員7時間40分 雇人のある業主7時間43分 雇人のない業主7時間51分

結果は、少し意外です。会社役員は雇用者より、週全体で2分長く、平日で6分長く、仕事のある平日では14分長く眠っています。

「役員ほど短眠」という結果ではありません。むしろ、今回の表では、雇人のない業主の睡眠時間が最も長くなっています。

もちろん、役員の人数、年齢、男女比、職種は雇用者と同じではありません。したがって、これをもって「役員はよく眠る」と断定することもできません。言えるのは、少なくともこの集計表から「役員だから短眠」とは言えない、ということです。

判定:短眠の傾向は少し見えるが、「超短眠で成功」は不支持

伸びをして起き上がる女性

公的データから確認できたのは、次の3点です。

  1. 高所得層ほど平均睡眠時間が少し短い傾向がある
  2. 高所得層では仕事時間も長い
  3. 会社役員は雇用者より短眠ではない

したがって、「成功者はみな短眠」「3時間以下の睡眠で能力と健康を保つ人が一般的」といった主張は、今回の公的統計からは支持できません。

睡眠を削れば、自由時間は増えます。そこまでは本当です。しかし、その増えた時間が成功に変わるかどうかは、別の話です。

眠るか、働くか。二択に見える話でしたが、実際には「何に何分使ったのか」を見ると、だいぶ輪郭が変わります。

出典

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