寒い地域ほど服代は高い?主要52都市の気温と被服・履物費をデータで検証

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寒い地域ほど服代は高い?
主要52都市のデータで検証

家計調査の被服・履物費と、気象庁の冬季平均気温・最深積雪を比較しました。

寒い街なら、コートも靴も必要。だから服代も高い――そう思うのは自然です。

でも、都市の「寒さ」だけで家計の被服費は決まるのでしょうか。総務省統計局「家計調査」と気象庁の平年値を突き合わせ、主要52都市を同じ条件で比べました。

答えは、単純ではありません。寒い地域ほど服代が高いという明確な関係は、今回のデータでは確認できませんでした。

ワンちゃん

寒い場所ほど、服にお金がかかりそうだよね!

解説

気温だけで決まるとは限らないので、52都市の数字で確かめてみましょうね。

寒い街ほど服代が高い?52都市を比べてみました

もし「寒い地域ほど服代が高い」のであれば、冬の気温が低い街ほど服代が高く、暖かくなるにつれて少しずつ安くなっていくはずです。

そこで、主要52都市を冬の気温が低い順に並べ、2023〜2025年の「被服及び履物費」の平均を比べました。ここでいう金額は、二人以上世帯の1世帯当たり年間支出額です。

ところが、結果はきれいには並びませんでした。寒い都市でも服代が低いところがあり、反対に、それほど寒くない都市でも服代が高いところがあります。

主要52都市を冬季平均気温が低い順に4グループへ分け、被服及び履物費の年間支出額3年平均を比較した棒グラフ。
図1:冬季平均気温別の4グループで見る被服・履物費

4グループの平均を見ても、寒い順に服代が下がる形にはなっていません。今回のデータでは、「寒い街ほど服代が高い」とは言えませんでした。

52都市を寒い順に並べても、服代はバラバラ

1都市ずつ並べて見ても、左から右へ服代が順番に下がる形にはなりません。

もし冬の寒さだけで服代が決まるなら、寒い都市が並ぶ左側ほど高く、暖かい都市が並ぶ右側ほど低くなるはずです。実際には、点は上下にばらついています。

主要52都市を冬季平均気温が低い順に並べ、被服及び履物費の年間支出額3年平均を点で示した図。時系列ではない。
図2:52都市を寒い順に並べた被服・履物費

この図は時間の流れではありません。冬季平均気温が低い順に都市を並べただけの図です。気温が高くなるにつれて、被服・履物費が一定の方向へ動く様子は見えません。

もう少し詳しく調べても、気温と服代の関係はかなり弱い

ここからは、詳しく見たい人向けの図です。横軸を冬の気温、縦軸を被服・履物費にして、52都市をまとめて比べました。

冬季平均気温と被服及び履物費の散布図。主要52都市の点と回帰線を示す。
図3:冬季平均気温 × 被服・履物費の散布図

点が右下がり、または右上がりにまとまれば、気温と服代に関係がありそうだと考えられます。しかし実際には、点は広く散らばっています。

統計的に調べても、気温と服代の関係はかなり弱い結果でした。補足すると、Pearson相関係数は-0.109、Spearman順位相関係数は-0.065です。

都市ごとの被服・履物費の違いを、冬の気温だけで説明するのは難しいといえます。

「靴なら雪国ほど高いのでは?」も比べてみた

服全体がダメでも、靴なら差が出るかもしれません。防寒靴や雪道用の靴が要る地域なら、履物類の支出に表れそうです。そこで被服費の内訳も確認しました。

今回調べた内訳で、冬季平均気温との絶対相関が最も大きかったのは「履物類」でした。ただし、相関係数は-0.131。ここも強い数字ではありません。

冬季平均気温と履物類支出の散布図。主要52都市の点と回帰線を示す。
図4:冬季平均気温 × 履物類支出の散布図

被服・履物全体より数字はわずかに大きくなりましたが、関連は弱いままです。「寒い都市ほど靴代が高い」も、この52都市のデータでは裏付けられません。

雪が多い街ほど、靴代は高い?

では、寒さよりも雪の量ならどうでしょう。雪道を歩く場面が多ければ、靴の選び方にも差が出そうです。

最深積雪のデータを利用できた45都市で比べると、履物類支出との相関係数は-0.116でした。こちらも、明確な関連と呼べる数字ではありません。

なお、積雪差の年間合計は今回使ったデータで52都市すべて未観測でした。数字を0cmとして混ぜず、分析対象から外しています。

最深積雪と履物類支出の散布図。積雪データのある45都市の点と回帰線を示す。
図5:最深積雪 × 履物類支出の散布図

雪の多い地域で、防寒性や滑りにくさを考えた靴が必要な場面はあるはずです。それでも家計調査の年間支出額では、積雪量が増えるほど履物費も高くなる、という単純な線は見えてきませんでした。

ワンちゃん

雪が多いほど、靴代も高いと思ってた!

解説

必要な靴の種類だけでは、年間の支出額は決まりません。今回の数字では、はっきりした関係は見られませんでしたよ。

気温から予想した金額と、大きく違う都市もある

気温だけで作った回帰線から、大きく外れる都市もあります。ここを見ると、気温以外の要素を無視できないことが、よりはっきりします。

さいたま市の年間支出額3年平均は164,986円。回帰モデルの予測約118,572円を約46,414円上回りました。東京都区部も実績156,038円で、予測約117,696円より約38,342円高くなっています。

逆側では、青森市が実績84,767円で予測約121,659円を約36,892円下回りました。秋田市は約30,297円下、温暖な那覇市も実績77,811円で予測値を約32,698円下回っています。

都市 被服・履物費 回帰予測 差
さいたま市 164,986円 118,572円 +46,414円
東京都区部 156,038円 117,696円 +38,342円
青森市 84,767円 121,659円 -36,892円
那覇市 77,811円 110,509円 -32,698円
秋田市 90,551円 120,847円 -30,297円

ここで「なぜ、さいたま市は高いのか」「なぜ青森市は低いのか」まで決め打ちはしません。今回のデータで言えるのは、冬の気温だけでは実際の被服・履物費を説明しきれない都市がある、というところまでです。

服代は、寒さだけで決まる数字ではない

家計調査の「被服及び履物」は、服を何着買ったかを示す数字ではありません。今回は二人以上世帯の名目年間支出額です。購入量、単価、世帯人数や年齢構成を、この数字だけから切り分けることはできません。

衣類や靴は、電気や水道のように毎月ほぼ一定量を使うものでもありません。冬物のコートを買い替えた年は増え、翌年はほとんど買わない。そんなブレがあり得ます。

子どもの成長、仕事や学校で必要な衣類、購入するブランドや単価も効きます。被服・履物費は、地域の寒さだけで単純に決まる費目ではない。今回の結果はそこを示しています。

今回の検証で分かったこと

「寒い地域なら、防寒着が要るから服代も高そう」。筋の通った仮説に見えます。

ですが、主要52都市で比べると、寒い地域ほど服代が高い、という明確な統計的関連は確認できませんでした。履物だけでも、積雪と履物費の関係でも、答えは同じです。

都市データは、もっともらしい説明ほど要注意です。NIPPON DATA LANDでは、地域の特徴を語る前に、まず数字で確かめます。

この結果を受けて、各都市の被服・履物費を「寒い地域だから高い」「雪国だから靴代が高い」と自動的に説明することはしません。支出額、全国平均との差、都市間順位、内訳など、データから直接確認できる事実を中心に扱います。

使用したデータと分析条件

家計データには、総務省統計局「家計調査・家計収支編・二人以上の世帯・品目分類」を使用しました。2023年・2024年は統計表ID 0003348239、2025年は 0004023605 を使用しています。

対象とした費目は、被服及び履物、洋服、シャツ・セーター類、履物類です。52都市すべてについて、2023〜2025年の被服・履物費を取得できており、欠損値や秘匿値を便宜的に「0」として扱う処理は行っていません。

気象データには、気象庁の2020年平年値 第5版(統計期間1991〜2020年)を使用しました。川崎市は横浜、相模原市は八王子、北九州市は八幡を代理観測地点として使用しています。その他を含め、冬季平均気温については52都市すべてデータを確保しています。

詳しい統計値は、Pearson相関係数-0.109392、Spearman順位相関係数-0.064549、線形回帰 R²0.011967、Pearson p値0.44012503です。

なお、本分析は相関関係を確認したものであり、気温が被服費を増減させる因果関係を証明するものではありません。

出典:総務省統計局「家計調査」、総務省統計局「家計調査」2025年表、気象庁「2020年平年値 第5版」

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